2010年11月29日月曜日

昨日のジャケット

あれはニューヨークのお供でした。セントラルパークが舞台の二人芝居をやる事になり,ニューヨークに飛び立ったのでした。井の頭公園では代用できない気がして。
光と闇のセントラルパーク。グリニッジビレッジの安宿は一泊50ドルほどで、三畳ほどの部屋はベッドがメインでちっちゃい机にちっちゃい窓をあけると壁。途中で出なくなる共同シャワー、早朝からドアの前で激しく罵倒しあう男女。
十日ほどの滞在中ずっと風邪引いてて,ホテルではくつろげず,無理矢理毎日セントラルパーク。昼間のパークは爽やかなんですよ,リスがいて、読書してる人、ローラーブレードしてる人、観光客、子供達。夜は不気味でしたよ〜。
西をハーレムに歩いて行くとみるみる景色も空気感も変わってきて。白浮きしてる自分と視線をひしひしと感じながらも目的地までは行かねばと,口をついて出てきた歌が橋幸夫「いたこのぉい〜たろお〜ちょいとみな〜れ〜ば〜あ、いたこのぉ・・・」何ですかね?あの首の動きにインスパイアされたのかな?「俺は平気だよ〜」みたいな。  だか尋ね人は居ず。
チャイナタウン、ブルックリンと楽しかったな。
セントラルパークの匂いを染み付けた俺は怖いモノなしで帰国したが,待っていたのは「舞台中止になったよ〜,なんか つよしがやれないんだって」という演出家からの電話だった。
俺は激しく拍子抜けしたが,ホッともした。その芝居を仕上げるには,かなりしんどい闘いになるのは目に見えてたから。
かくして俺は同時期にオファーされていた映画に参加出来たのでした。

それから二年後位かな。又性懲りもなく,つよしと「何かやろうぜ!」って盛り上がり、二人で脚本を作り上げていきました。あの実現しなかった戯曲をベースにスタートしたのに,どんどんずれていき、完成したのが「五臓六腑」
第一幕  舞台は山下公園、カモメをぼんやり眺めながらベンチで休憩をしている男、岡誠の前に現れる旅人風情の妙な男、 杉 栄太郎。

杉「あの船はパリに行きますか?」
岡「・・・」
杉「あの!船はパリに行きますか?」
岡「え?私?私ですか,ああ あれは伊豆行きです」
杉「伊豆〜?・こんなところで何やってるんですか?」
杉は、いかにも平凡で善良そうに見える岡に執拗に絡んできます「こいつ気に入らねえ」。とんちんかんに見えるやり取りの中に岡は次第に平常心を失っていきます「く、狂ってる」。杉は逃げようとする岡を「おかまの、おかまこと君」とあおり、しまいには実力行使で「生の爆充論」を説き,遂に岡誠はちから無く服従を誓います。

第二幕は何故かロミオとジュリエットのバルコニーのシーンから始まります。ここでは岡誠はすっかりそっちに開花して杉を狙っています,一方 杉は 生を爆充させる為の特訓ロミオとジュリエット編においての岡の熱心さに感心しつつも、身の危険を感じ始めます。
そして二幕の終わりには,遂に杉は岡に絡めとられます「ご、後生ですぅ〜〜〜」。

第三幕の二人は完全に狂ってます。舞台は再び山下公園、何故か三輪車に乗っている杉には巨大な客船が見えてます。岡は何故か 赤い靴の像になってます(笑)。
杉役の俺には眼前にそびえる巨大な豪華客船を感じました,それは例えて言えばフェリーニ映画のように幻想的に霧がかかっていて,真っ暗な闇に汽笛が響いて,乗客達の楽し気な声、赤や緑のライトが滲んでいて。

と、こんなに長たらしく書いてもさっぱり分からないでしょう?何せ実際に観にきてくれた人もわからなかったんじゃないかな〜,でも何か感じてくれたとは思う。気持ち悪いとか,コワいとか,わけわかんないけど本気だとか。

ストレートプレイか,アングラか,アクションか,コメディか、そんな形容を拒む世界。
リハ―サルでは険悪になって取っ組み合いになったりもしたけど,だからこそ不穏な空気が出てたのかもな、俺の心には濃ゆ〜いシミになって残ってる。元気かな?つよし。

お〜ジャケットから遠くにきたな〜これ

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