2010年11月28日日曜日

ぼくの捨てられないジャケット

20年位前だろうか,遊びに行ったパリでペールラシェーズ墓地内のモジリアニの墓に花を持ってお参りに行った。お日柄も良くひとしきりはしゃいだ帰りのバス、途中で乗ってきた御婦人は自分の背丈より やや短い筒状の荷物を持っていた。俺は「ああ,ラグでも買ってきたんだな〜」とぼんやり見てた,とすぐに静寂は破れた。
御婦人は俺の目をキッと凄い形相で見据え,口からは何か罵倒の言葉が溢れそうな勢いで 前に抱えてた筒状の荷物を急いで俺から隠すように後ろに回した。
俺は一瞬あっけにとられたけどすぐピンときて目をそらして、事態は落ち着いた。怪しい人物に見られるのは慣れてたけどそんなじゃなく、あの目には「この盗人共!」とでも口走りそうな差別の色が見てとれたんですよね。ショックだったけどそれは俺がジプシーに間違われたからじゃなく,あからさまな被差別の当事者を体感して、日常的にこんな扱いをされる人々に思いを馳せたからでした。客観的には「面白い体験したな,やりぃ〜」でしたけど。
あの目で見られた事があるのとないのでは決定的に違う気がするので,この思い出は貴重な宝物として大切にとってます。というか忘れられないでしょう。そんな役がきたら強烈な道具になるので。

フランスの名誉の為に言うと,上の話を含めイヤな思いはした事ないです。皆気さくに話しかけてくるし,言葉の壁をノートに絵を書きながら超えたり。バーをはしごしたり,髪切ってやったり,男にナンパされたり。

あ!でもその時は写真のジャケットじゃなかったな。

0 件のコメント:

コメントを投稿